Project Story
2023年、東京ディズニーリゾートは40周年を迎えた。東京ディズニーランド開園時から、節目の年に周年を祝うアニバーサリーイベントが開催されてきたが、ゲストを迎えるキャストたちにとって、2023年は社会状況の大きな変化の中、それまで経験したことのないアニバーサリーイベントだったという。キャストたちは直面した課題をどう乗り越えたのか。2年以上にわたるキャストたちの奮闘を追った。
Cast
【企画】総合職
マーケティング開発部
【企画】総合職
マーケティング開発部
【開発】総合職
商品開発部
【開発】専門職(調理)
フード販売部
【マーケティング】総合職
マーケティング・
コミュニケーション部
【オペレーション】
テーマパークマネジメント職
パークサービス運営部
【オペレーション】
テーマパークマネジメント職
ショー運営部
Index
Phase 01:企画Introduction
40周年イベントのプロジェクトが始動したのは、2021年春。まさに新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下だった。まず着手したのはイベント全体を統括するコンセプト開発。大きく社会状況が変化する中、イベントがスタートする2023年時にゲストのみなさんに「パークで何を感じていただきたいか」、「パークでどのような体験をしていただきたいか」を考え、それを具現化するためのコンテンツをさまざまな組織と連携して創り上げていくことが、マーケティング開発部に課せられたミッションだった。多くの制約がある中、生み出したコンセプトとは?
Phase 01:企画Mission & Action
東京ディズニーリゾートにとって大きな節目である40周年は、ゲストのみなさんやキャストにとって特別な1年にしたいと考えていました。開発を開始した時期は感染症の拡大によりパークも大きな影響を受けていましたが、40周年を迎える2023年は、コロナ禍が落ち着いていて、40周年イベントを大きく開催することができる社会環境になっているはずだと考え、よりその想いを強めて開発に臨みました。このような状況も踏まえ40周年イベントでゲストにパークで何を感じていただきたいかを突き詰めた結果、「繋がり」をコンセプトにしたいと考えました。
そして、「ゲストのみなさんもキャストもパークも、みんなで繋がってお祝いしたい」という想いを込めて「ドリームゴーラウンド(Dream-Go-Round)」というテーマを設定しました。また、各組織にコンセプトやテーマについて説明を行い、コンテンツを検討する中で、40周年の祝祭感がありながらも、みんなの繋がりを象徴するモチーフとしてガーランドを採用しました。そして、「ドリームガーランド」を40周年のキーアイテムとすることに決めました。
※40周年イベントのモチーフである「ドリームガーランド」のデザイン
Phase 01:企画Mission & Action
その後具体的なコンテンツについて議論を重ね、ショー、デコレーション、商品、フードメニューなどを関係組織と約1年半かけて創り上げていきました。その過程で大切だと感じたのはコンセプトと各組織のコンテンツの方向性が合っているかを確認することでした。そのために各組織としっかりと何度も話し合うことを重視しました。
話し合いを続ける中、困難なこともありましたが、ゲストに「繋がり」を感じていただきたいという想いの下、プロジェクトメンバーが「繋がる」ことで乗り越えることができました。
Phase 01:企画Mission & Action
私たちがたどり着いたのは「みんなで繋がって40周年のお祝いをゲストと一緒にしたい」という想いでした。東京ディズニーリゾートの魅力のひとつはリアルな繋がりであり、40周年イベントでは改めてそんな「繋がり」を大切にしたいと思いました。その想いを一つ一つが繋がるイメージを持つ「ドリームガーランド」というモチーフで表現できたことは、今回の40周年イベントのキーポイントになったと思います。
次の課題は、どうすれば「ドリームガーランド」を広められるか、ということでした。パーク内のショー、デコレーション、商品、フードメニューを創るだけではなく、キャストやゲストのみなさんにより親しみを持って受け入れてもらうにはどうしたらいいか。ゲストのみなさんとキャストの間でコミュニケーションを生み出せないか。これまでにない試みも取り入れながら「ドリームガーランド」を広げていきたいと考えました。
Phase 01:企画Mission & Action
これまでにない試みの一つとして「ドリームガーランドカード」があります。これは「ありがとう!」「すてき!」「最高!」などの言葉が添えられたカードで、これまでキャストからゲストへ渡すツールはありましたが、ゲストからキャストにも思いを伝えることができるツールという新しい試みでした。このカードは「ドリームガーランド」を通じたゲストとのコミュニケーションについてオペレーション部門のみなさんと話していく中で、ゲストとキャストが双方向から積極的にコミュニケーションができるツールがほしいというアイデアから生まれました。
イベントが始まり、実際にドリームガーランドカードを通じてゲストのみなさんとキャストのコミュニケーションが生まれている場を目の当たりにすることができました。
パークが近くにあり、実施した施策に対するゲストの反応をすぐに確認できることも、やりがいに繋がります。
Phase 02:開発Introduction
イベントをより盛り上げるために開発しているのが、スペシャルグッズ、そしてレストランで提供されるスペシャルメニューだ。
商品開発では特別チームを編成し、コンセプトの開発からプロジェクトに参加。スペシャルメニューの開発は、イベント開始の1年ほど前から始まった。課題となったのは、多くのゲストに受け入れていただくこと、そして、携わるメンバーたちの想いを具現化することの難しさだった。それぞれの担当者たちが開発にかけた想いを聞いた。
Phase 02:開発Mission & Action
商品開発部は、イベントグループからのコンセプトイメージを具現化する段階から携わります。私はプロジェクトリーダーとしてパークで販売する全ての40周年商品を統括する立場にありました。実は、キーモチーフである「ガーランド」は、商品開発部から発信したもの。一つひとつが「繋がる」イメージを持つガーランドはイベントコンセプトである「繋がる」の具現化に相応しいと考えました。 「ドリームガーランド」として商品化することを決定したものの、より多くのゲストに受け入れていただくことで、パーク全体でイベントを盛り上げたいと考えていました。
Phase 02:開発Mission & Action
多くのゲストに受け入れていただくには、商品自体の魅力、適正な価格設定、認知のためのプロモーションなどたくさんの条件を満たしていく苦労がありました。まずはデザイナーや製造業者様と連携し、商品の魅力を最大限高めつつ、適正な製造原価を追求しました。さらに、キャストのネームタグやパーク内の装飾などゲストの目に触れるところにもガーランドを配置し、一体感を創出。多くの組織と連携してドリームガーランドの持つ意味をお伝えするための仕掛けを実施しました。
Phase 02:開発Mission & Action
40周年イベントでは、通常のイベントよりも早い時期、2022年の夏ごろからメニュー開発が始まりました。まず行われるのが、全レストランを集めたミーティング。メニューが店舗間で重複しないようにコンセプトのすり合わせを行うことから始めました。私の勤める和食レストランに求められたのは、「お祝い」をイメージしたメニューです。ファミリー層のゲストが多い店舗ということから、「みんなでごちそうを食べる」というコンセプトを設定。高級食材を使ったメニューを開発することとなりました。
今回、アニバーサリーイベントのメニュー開発は東京ディズニーシー20周年に引き続き2回目で、メニューを開発するだけでなく、どのようにして共に働く店舗の仲間が一丸となり、ゲストに特別感を提供できるか、そこが難しい点でした。
Phase 02:開発Mission & Action
開発したメニューは、料理とドリンク。料理はスーシェフ※1がメインとなり、ドリンクはスーパーバイザー※2にも参加してもらい、店舗一丸となって新しいメニューの開発に取り組みました。メニューが決まるまでは1ヵ月ほど。調理時間や和食レストランとしてのコンセプトを考慮しながら、店舗の仲間たちと意見を出し合い、調整を重ねました。和食ではありますが、ディズニーキャラクターのモチーフを使用したり、レストランのバックグラウンドストーリー(背景となる物語)の表現により、東京ディズニーリゾートを感じられるメニューづくりを心がけました。メニューが決まったら次は試作です。常にクオリティを維持しながらも、出来る限り短い時間で料理を提供するための工程を模索していきました。そして出来上がったのが、高級食材をふんだんに使った御膳、四季を感じられるスイーツ、弾けるクラッカーをイメージしたドリンクです。「家族の誕生日だから」「このメニューのために来店した」というゲストの言葉を聞くと、「ここでしか味わえないもの」を実現できたのではないかと思っています。
※1スーシェフ:テーマパーク内飲食施設の調理責任者。キャストの育成や食材の管理などを行う。
※2スーパーバイザー:テーマパーク内の各施設の時間帯責任者。キャストの育成や施設の管理運営を行う。
Phase 03:マーケティングIntroduction
2022年初頭に、マーケティング戦略の立案が始まった。年間集客数の目標を基に、具体的なマーケティング戦略を企画・実行したのが、マーケティング・コミュニケーション部のメンバーたちだ。
社会状況が変化する中、どのように「40周年の祝祭感」を伝えたのか?媒体担当としてアニバーサリーイベントの広告全般を統括したメンバーに聞いた。
Phase 03:マーケティングMission & Action
マーケティング戦略においては「祝祭感」を打ち出したいという想いが強かったです。そこで、私たちを含め東京ディズニーリゾートに関わる全ての人が40周年をお祝いすることを待っていたという想いを込め、イベント開始直後の4~6月期のキャッチコピーを「ずっと、待ってた!」に決定しました。 そして、考案されたのが日本全国で東京ディズニーリゾートの40周年を感じ、パークに行きたいと思っていただける施策を展開すること。全国のゲストと「繋がる」ためにも、新たなマーケティング施策にも挑みました。
Phase 03:マーケティングMission & Action
例えば、首都圏にお住いのゲスト、宿泊を伴う地域にお住いのゲストなど、それぞれの来園しやすい時期なども考えながら、広告やダイレクトプロモーションを展開しました。そして、今回新たな試みとして行ったのがTikTokの導入と東京ディズニーリゾート40周年スペシャルドローンショーの実施です。TikTokは既存のSNSではリーチしづらいターゲットに向けて新たに開設しました。全国5か所の花火大会で実施したドローンショーは、遠方のゲストにも東京ディズニーリゾートの40周年を感じていただけることを目的に実施しました。 私も実際にすべての開催都市に行かせていただいたのですが、観覧されているゲストの大きな歓声を聞くことができました。
現地の皆さんだけでなく、最後にYouTubeやSNSにアップしたドローンショーのスペシャル動画を多くの方にご覧いただくことができたり、多くのゲストにパークにお越しいただいたり、結果として東京ディズニーリゾートの40周年イベントを楽しんでいただくことができたと感じています。
Phase 04:オペレーションMission & Action
40周年イベントで開催されるスペシャルなコンテンツやエンターテインメントショー。そのオペレーションを担当するのが、パークサービス運営部やショー運営部のメンバーたちだ。イベントの全体コンセプトが決まると、プロジェクトが動き始めた。 メンバーたちが目指したのは、ゲストとキャストが触れ合える時間をつくり、最高のハピネスを創造すること。その想いを具現化したエンターテイメントを、メンバーたちはいかにして創り上げたのか。
Phase 04:オペレーションMission & Action
40周年イベントのコンセプトである「繋がる」をパーク内でどのように具現化するのか。それが、私たちパークサービス運営部に課せられたミッションでした。
検討の結果、ゲストとキャストによるコミュニケーションを盛り上げたいと考え、「ドリームゴーラウンドタイム!」を企画。ゲストとキャストがサプライズで一緒に盛り上がる施策です。コンセプトを具現化するべく、パークサービス運営部だけでなく、商品販売部やフード販売部などのキャストも一緒に、ゲストの笑顔のためにキャスト自身が楽しみながら参加できる内容にしたいと考えました。その実現にはコンセプトの浸透が必要だと考え、社内で40周年イベントに関する展示会を企画、実施。多くのキャストが足を運んでくれました。
Phase 04:オペレーションMission & Action
「ドリームゴーラウンドタイム!」にも多くのキャストが参加してくれ、コンセプトの浸透を通じ、組織を越えて「繋がる」ことができたと思っています。より近くでゲストと交流できる機会は、キャストのモチベーションにもなり、「ゲストのためにもっとこうしたい」という提案も多くなりました。キャスト一人ひとりの声に耳を傾け、それを実現させることも私の役割だと思っています。
Phase 04:オペレーションMission & Action
大小合わせて12台のフロートが登場するデイタイムパレード「ディズニー・ハーモニー・イン・カラー」は、久しぶりの実施となる大規模なパレードでした。私は企画段階からプロジェクトに参加しました。求められたのは、公演における運営上の問題を解決することでした。大きなパレードを担当するのは初めてで、関わるメンバーの人数も多かったので、プレッシャーもありました。
Phase 04:オペレーションMission & Action
大切にしたことは、メンバーの話をよく聞き、本質を見極めることです。すべての公演で同じクオリティを維持できるかという観点で意見を出すように心がけました。フロート、コスチュームづくりにもメンバーの声を反映し、細かな修正を繰り返していきました。100名以上のメンバーをマネジメントすることは大変なことではありましたが、一丸となって取り組めるチームをつくることができたと感じています。キャラクターとハイタッチして感動されている様子のゲスト、ダンサーと一緒に踊って笑顔になるゲストの姿を目の当たりにすることができました。